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解いたら1億5千万円!?ミレニアム懸賞問題とは

ミレニアム懸賞問題とは?

ミレニアム懸賞問題(けんしょうもんだい)とは、2000年にアメリカのクレイ数学研究所(Clay Mathematics Institute)が、「これらを解決したら100万ドル(約1億5千万円)の賞金を差し上げます!」と発表した、世界でまだ解決されていない7つの数学の難問のことです。これらの問題は、ただ単に「むずかしい」だけではなく、もし解けたら科学や技術が大きく進むかもしれない、とても重要な問題ばかりです。

「どうしてそんなに難しいの?」と思うかもしれませんが、それは数学者たちが何十年、あるいは100年以上も考え続けているのに、まだ正しい答えがわかっていないようなことばかりだからです。でも、その分「もし解けたらすごい!」とみんなが注目しています。

1. P vs NP問題

どんな問題?
ある問題を「パパッとすばやく解くことができるコンピュータのプログラム」と「答えがあっているかどうかをすぐにチェックすることができるコンピュータのプログラム」が、同じくらいのむずかしさなのかどうかを問う問題です。

身近なたとえ
たとえばジグソーパズルを考えてみましょう。パズルを解いて完成させるのはたいへんですが、完成したパズルを見て「ピースがきちんとハマっているかチェックする」のは簡単です。

  • 「パズルを解くのにかかる時間」=すごく大変
  • 「できあがったパズルが正しいかを見る時間」=わりと簡単
    これらが「本当に同じむずかしさなの?」というのがP vs NP問題のイメージです。

2. ホッジ予想(Hodge Conjecture)

どんな問題?
「図形」や「空間」をあらわす数学の道具として、「ホモロジー」や「コホモロジー」という考え方があります。ホッジ予想は、そういった図形の性質をうまく数式で言い表すときに、「ある条件をみたす特別なかたちが必ず存在するのでは?」という予想です。

身近なたとえ
ちょっと難しいのですが、平面や立体よりももっと高次元の図形を考えたとき、その形をどんな「小さなパーツ」でできているかという視点で見ます。「本当にそういうパーツの組み合わせで説明できるの?」というのを確かめたいのがホッジ予想です。

3. リーマン予想(Riemann Hypothesis)

どんな問題?
リーマン予想とは、1、2、3、5、7、11…といった「素数(そすう)」に深く関わる問題です。素数というのは割り切ることができる数が1と自分自身しかない特別な数。リーマン予想では、ある特別な式(リーマンゼータ関数)の「解(かい)の場所」が、ある線の上にきれいに並んでいるはずだ、ということを予想しています。

身近なたとえ
素数はインターネットの暗号技術をはじめ、いろいろなところで使われている大事な数です。リーマン予想が解けると、「素数がどんなふうに並んでいるのか」がもっとはっきりわかるようになります。そうなると、暗号の安全性を見直したり、新しい暗号を考えたりできるかもしれません。

4. ヤン=ミルズ方程式と質量ギャップ(Yang–Mills and Mass Gap)

どんな問題?
物理学の中でも、素粒子(そりゅうし)の動きやふるまいを説明するための方程式を「ヤン=ミルズ方程式」といいます。これが数学的にちゃんと正しくできていること、そしてそこに「質量ギャップ」(粒子の質量が0ではなく正の値をもつこと)があることを証明するのがこの問題です。

身近なたとえ
学校で理科の実験をするときに、事前に「こうしたらこんな結果になるはずだ」と予想しますよね。その「予想どおりになること」を数学的にきちんと示すという感じです。もし証明できれば、自然界の基本的なルールをより深く理解できることになります。

5. ナビエ=ストークス方程式の解の存在と滑らかさ(Navier–Stokes Existence and Smoothness)

どんな問題?
水や空気の流れを表す方程式を「ナビエ=ストークス方程式」といいます。私たちが「空気の流れ」や「水の流れ」を計算したいとき、この方程式を使うのですが、実はこれが「本当に解けるのか?」「解けたらそれはちゃんと“なめらかな”答えになっているのか?」がまだはっきりわかっていないのです。

身近なたとえ
コップに注ぐ水や、飛行機のまわりを流れる空気など、目には見えにくいけれど実はとても複雑な動きをしています。ナビエ=ストークス方程式がうまく解けるようになれば、天気予報や航空技術など、私たちの生活に役立つことがたくさんありそうです。

6. バーチ・スウィンナートン=ダイアー予想(Birch and Swinnerton-Dyer Conjecture)

どんな問題?
これは、円や球などよりももっと複雑な「楕円曲線(だえんきょくせん)」という図形についての予想です。「楕円曲線」に整数の点がいくつあるかを、ある特別な式を使って知ることができるのではないか、というのがバーチ・スウィンナートン=ダイアー予想です。

身近なたとえ
たとえば、「ここにある図形の上に“整数の座標”がいくつのるか?」を正確に数えたい、というイメージです。これがわかると、ほかの難しい数論の問題もいっしょに解きやすくなるため、世界中の数学者が挑んでいます。

7. ポアンカレ予想(Poincaré Conjecture)

どんな問題?
3次元の球(たとえば、地球の表面などをイメージするとわかりやすい)を、4次元以上で考えたときに、「穴があいていない」空間はすべて球のような形になっているはずだ、という予想です。

この問題は実は解決済み!?
ロシアの数学者、グリゴリー・ペレルマンさんが2002年頃に、この問題をほぼ解決してしまいました。その後、国際数学連合からフィールズ賞という大変名誉ある賞を贈ると言われましたが、ペレルマンさんは辞退したことでも話題になりました。ミレニアム懸賞問題の中では唯一「解決された」と考えられている問題です。

まとめ

ミレニアム懸賞問題とは、「解けたら1億円!」というインパクトだけでなく、数学や科学の発展に大きく関わる重要な問題の集まりです。

  • P vs NP問題:コンピュータでむずかしい問題を解くのと、答えが正しいかチェックするのは同じくらい大変か?
  • ホッジ予想:高次元の図形をどうやって数学的に表すか?
  • リーマン予想:素数がどんなふうに並んでいるかを予想する大問題。
  • ヤン=ミルズと質量ギャップ:素粒子を説明する方程式の正しさを数学的に証明したい。
  • ナビエ=ストークス方程式:空気や水の流れの方程式にちゃんとした答えがあるのかどうか?
  • バーチ・スウィンナートン=ダイアー予想:楕円曲線という図形に整数の点がどれだけあるかを予想。
  • ポアンカレ予想:穴の開いていない空間は球のような形をしているか?(解決済み)

これらはどれも一筋縄ではいきませんが、もし誰かが証明したら数学に大革命が起きるかもしれない…というくらいすごい問題です。小学生のみなさんの中から、将来これらの問題を解いちゃう人が出てくるかもしれませんね!

数学は難しそうに見えますが、じつは「身近な世界をきちんと理解したい」という気持ちからはじまります。好きなことをじっくり調べたり、わからないことを諦めずに考えたりすることが、ミレニアム懸賞問題のような大きな発見につながっていくかもしれません。ぜひ、みなさんもわくわくしながら学んでみてください!

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